355130 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

プリズム発達研究所

プリズム発達研究所

研修医日誌

G大学付属病院でスタートした、私の研修医生活。もうそろそろ時効な事件もお披露目できると思います。



 研修医の頃、知識や経験がないまま、突っ走っていた自分を、最近振り返ることができるようになりました。


◆1 ぬいぐるみのプレゼント

  化膿性髄膜炎という病気があります。頭痛、嘔吐、発熱があってとてもつらい状態です。診断は、背中から、針を刺して脳脊髄液を採取して、細菌感染やウイルス感染が確認されればつきます。夏風邪の時期のものは、ウイルス性の髄膜炎が多く、基本的には重症化せず、脊髄液の穿刺の検査も1回だけの事が多いです。

 しかし、化膿性髄膜炎は、細菌感染によって、中枢神経を荒らし回り、悪いときはけいれんやてんかんになったり、知的障害を残すこともあります。

 かつて研修医のころ、5才くらいの女の子の主治医になりました。その子が、化膿性髄膜炎でした。細菌の検査と、膿の排出のために、入院の最初の1週間は毎日のように、背中の穿刺をしました。刺す自分の方も、子どもの泣き声がつらくて、

「ごめんね、ごめんね・・・・」と言いながら、涙ながらに背中に針をさしていました。実習の看護学生からも、

「先生、検査減らせないんですか?」と質問というか懇願されたくらいです。けれど、もし、かわいそう、といって、検査を減らして不十分な背膿で後遺症が残ったら、どうでしょうか。そんなことも考えながら治療していくのです。

 幸いにも順調に回復し、退院の日に、僕はその子に、大きなキティちゃんのぬいぐるみをプレゼントしました。とても喜んでくれましたが、その行為は本当によかったのでしょうか。

 医師として、必要なことをやったのであるし、その治療や励ましの言葉はプロとして当選のことだけれど、プレゼントを買うのは少し違な、ということに気がつきました。自分のベストを尽くしたのなら、それ自体が最高のプレゼント=サービスだから、それ以上の物は不要だし、そういうプレゼントによって、自分の治療が、少しぼやけてしまうような、そんな感じがするのです。それは、今だからこそ、感じることです。

 ともあれ、元気に暮らしていることをはがきで知ると、とても嬉しいものです。それこそが、僕にとっての最高の報酬です。

 たまには、医師であることを、読者にアピールしてみたくなった、Drほがらかでした。




◆2 Drほがらか 研修医編  ~深夜の点滴練習会~

 医師にはいろいろな専門的な技術があるものです。外科系なら手術ができる。内科系なら内視鏡や専門的な検査ができる。

 小児科医の技術ってなんだと思いますか?もちろん知識や経験も大切です。ですが、もし技術といえるものがあるとしたら、それは点滴の針をさすことでしょうか。

 子どもの小さな血管に点滴用の針を刺します。静脈内に留置することができるようになって、本当に小児医療は格段に選択肢が広がり効果も上がっているようです。

 この留置針、上手になるには経験が大切です。研修医には知識があっても経験がありません。そこで、研修医同士が、仕事が終わった12時頃(夜中)、処置室に集まって、お互いの手に点滴の留置針を入れあうという、文字通りの血染めの努力をしたものです。

 多くの場合、手の甲にある静脈を使いますが、大人ので練習してもサイズが大きすぎて練習になりません。そこで、大人の場合、指の毛細血管を使って針を留置する練習をしたものです。

 翌日には、手に注射のあざが出来ていますから、気をつけないと、薬物常習者の手みたいになっちゃいます。(笑)そんな陰の努力をして、今の技術があるのです。生まれたばかりの新生児にも同じように針を留置します。本当に、血管が小さい!細い!でも、子どもたちの命のためです。がんばります。



◆3 またしても、病。


 高校時代に腎炎を患った、私。(詳細は闘病編参照)

研修医の激務が、じわりじわり。そして、ついに、数ヶ月後、倦怠感と尿タンパクの再発。

教授からは、昼休みに当直室で仮眠をとるようにと指示された。まあ、そのくらいで改善するわけもないが、仕方ない。

 そして、冬。みんなが大学病院を出て、一般病院に散らばっていく日が来た。そのとき、教授と相談して、身体的な負担があまりないと予想された某病院へと勤務することになった。仕事の量を調節するということが、研修医のころから始まっているのでした。




© Rakuten Group, Inc.